くしくも混信トラブルで墜落破損した215ccの星型5気筒ガソリンエンジンMOKIを
修復・再起させます。また、元の低音のぶ太いノートをあげてくれるか・・・。
オープンロッカーのMOKIはハンガリーのブタペスト製
4,5番シリンダーが大きく開きコンロッドは完全に変形しています。
幸いにもクランクシャフトと主コンロッドに歪みが見られませんので、
何とか修理できそうです。・・・・^^;
海外販売店?での修理見積もりは何とUS$で3000ドル・・・
お預かりして修理してみることにしました。
普通のラジコンエンジンを見てると215ccは、あまりに大きい・・
バイクだったら中型免許が必要・・・?
大きく破損しているのは、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
@4,5番シリンダーのフランジが変形しピストンが抜けない・・・・・・
A4番シリンダーヘッドのロッカーアームは根元から飛んでない。・
B4,5番のコンロッドが変形 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Cクランクケースの4,5番シリンダー取り付け部がアール状に変形
D使えそうなプッシュロッドは 1本のみ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Eエキゾースト&インティークパイプは 数本が変形・・・・・・・・・・・
Fラジアルマウント変形割れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
板厚6mmのSS材をプラズマでカットして、フランジ歪みの修正冶具を製作しました。
合板の上にシリンダーをあてがって治具をハンマーで叩いて歪みを戻していきます。
結構荒っぽいやり方ですが、衝撃で曲がったものは衝撃で戻すしかありません。
修正後のフランジです。
まだ、僅かに歪みは残っていますが平面出しは旋盤で切削することにします。
フランジの歪みはほとんど取れましたがシリンダー内部にも塑性変形がありスムースにピストンが通りません。
シリンダー内面は後でホーニング加工を施すことにします。
旋盤チャック時にシリンダーに傷が付かないようにアルミ缶で保護します。
マグナムDRY?のアルミ缶を切って使いました。
アルミ缶の厚みは0.12mm。
傷付けたくないワークにはバイスでチャックする時も使えて便利です。
空き缶の有効利用・・・・(^^)
シリンダーのフランジ部を旋盤で面出しを行います。
シリンダーを挿入するクランクケースの挿入部も楕円状に変形してシリンダーが入りません・・。
一緒に挿入部も0.05mm切削して小さくしました。
ホーニングはバイクのブレーキシリンダーの研磨用を使いました。
ちょうどいいサイズ。砥石の粒度は350番程度です。
スプリングと遠心力で広がり、内面を均一に研磨できる便利な道具です。
研磨完了したシリンダー内部です。
歪み部が削れて下地が少し見えます。
このシリンダーライナーは表面にハードクロム?のメッキが施されています。
また内面には、研磨時の筋がクロスするように入ります。この「クロスハッチ」はシリンダーのオイル保持のために大変重要です。
ピストンもスムースに動くようになりました。・・・(^^)
ハンガリーから取り寄せてもらった新品のパーツです。
1EUR=161円とユーロ高で結構な価格ですが、一品の切削加工は手間隙が大変です。
海外からの輸入は現物が届くまで、やきもきします。
無事に届いて一安心・・・。
最も難関の4・5番シリンダー取り付け面の修正です。
クランクケースをバイスにチャックして垂直面をテストインジケータで測定します。
ラッキーなことに垂直度は約30mmの移動で2/100mm以内なのでそのままokという事で・・・。
クランクシャフトの水平もチェックしてみました。
クランクシャフトをケース内面に押し付けて密着させて水平を見ます。
これも2/100mm程でX軸の水平はokという事で・・・。
続いてY軸方向の水平を調整します。
Y軸を行ったり来たりの繰り返しで1/100mm以下に水平を調整しました。
再度、Z軸の垂直を確認してワークのセット完了です。
切削はあっと言う間ですが、セットには何倍もの時間がかかりました。
4・5番シリンダーの2箇所を修正切削・・・疲れた・・・。
ただのアルミ板ですが、このエンジンにとっては重要部品です。
同じものを2枚製作して完成。
クランクケースを新品にすれば何でもないことですが・・パーツは無茶高い・・。。
使えるものは、リサイクルして・・・。
クランクケース&フロントハウジングパーツです。
ハンガリー製を侮るなかれ、精密な切削加工が施されています。
カム駆動の減速ギアと脈動を生み出す小さなヒストン&コンロッド。
星型はケー内部の脈動がありません。
(星型ピストンは上昇・下降が同時に存在してしまいます。)
カム駆動用ギアの1枚に偏芯クランクが設けられピストンを駆動し脈動を発生させます。
この脈動はキャブレターのダイヤフラムを駆動するようになっています。
カムは1/6減速で全周の3箇所の設けられ、精密な駆動内ギアが切られています。
周にある小さな黒いポッチは点火センシング用のマグネットが埋め込まれています。
点火時期調整は円周にあるマイナスネジを緩めて微調整できるようになっています。
非常に高精度の切削加工で・・このエンジンの性能を物語っているようです。
フロントハウジングに設けられた小さなシリンダー&ピストンです。
ここからチューブでキャブのダイヤフラムに導かれています。
4・5番シリンダーにはアルミの座布団を敷いています。
圧縮比はほとんど変わってないと思います?
5気筒のシリンダーとヘッドを組み込むと、それらしくなって来ました。
このメカニカルな、幾何学的な動きが星型の魅です。
シリンダーの下死点は各シリンダーで明らかに異なります。
ショートコンロッドではやむ得ませんが、性能にはどのくらい影響するのでしょうか?
取り寄せたロッドが3mm長い・・・(--;)
先端部は焼き入れが施され簡単には切削できませんので、グラインダーで研削します。
コンパクトなクランクケーですが、シリンダーとヘッドが付くと・・(--;)
結構でかいエンジンです。215ccもあると思うとかなりコンパクトなエンジンです。
もう完成間近です。
ラジ技の2004年1月号にMOKIの5気筒エンジンが掲載されてました。
記事によると自動進角装置やレブリミッター機能を持った電子制御・・・
芸術的な珠玉の存在・・・とあります。
GeeBee R-2に搭載され第17回RC航空ページェントで披露されてます。