甦れ!星型5気筒エンジン MOKI



復活したMOKI星型5気筒/浦安I氏所有

【215ccMOKI星型5気筒ガソリンエンジン・・・復活!2008/3/11】

くしくも混信トラブルで墜落破損した215ccの星型5気筒ガソリンエンジンMOKIを
修復・再起させます。また、元の低音のぶ太いノートをあげてくれるか・・・。


MOKI星型5気筒搭載のステアマン/浦安I氏所有

【215ccMOKI星型5気筒ガソリンエンジン搭載のステアマン】

浦安市のI 氏所有の大型機「ステアマン」です。
MOKI星型5気筒ガソリンエンジンを搭載した精悍な雄姿・・・。
バイオレット&イエローのカラーリングはI 氏のオリジナルです。
215ccの5気筒ガソリンエンジンは星型独特の低音ノートを響かせます。
 (写真をクリックすると、大きく表示できます)


星型のシリンダー&プッシュロッドが・・・

【ステアマン・MOKI】

215ccの排気量はD32×P10のバカでかいプロップを難なく駆動します。
美しいカラーリングのカウルの奥に、星型のシリンダーとロッドが・・・。


無残にも・・・。 MOKIも・・・・

【形あるものいつかは壊れる・・。】

気に入った飛行機ほど短命なのはなぜ?
無残としかいいようがありません。
忍びないので、写真は大きく出来ません。
せめてエンジンだけでも・・・・。




MOKI星型5気筒エンジンの修復

墜落で破損したMOKIエンジン

【破損したMOKI5気筒エンジン】


オープンロッカーのMOKIはハンガリーのブタペスト製
4,5番シリンダーが大きく開きコンロッドは完全に変形しています。
幸いにもクランクシャフトと主コンロッドに歪みが見られませんので、
何とか修理できそうです。・・・・^^;

海外販売店?での修理見積もりは何とUS$で3000ドル・・・
お預かりして修理してみることにしました。
普通のラジコンエンジンを見てると215ccは、あまりに大きい・・
バイクだったら中型免許が必要・・・?

大きく破損しているのは、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
@4,5番シリンダーのフランジが変形しピストンが抜けない・・・・・・
A4番シリンダーヘッドのロッカーアームは根元から飛んでない。・
B4,5番のコンロッドが変形 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Cクランクケースの4,5番シリンダー取り付け部がアール状に変形
D使えそうなプッシュロッドは 1本のみ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
Eエキゾースト&インティークパイプは 数本が変形・・・・・・・・・・・
Fラジアルマウント変形割れ ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・





【ここからMOKIエンジンの修復作業偏】  (写真をクリックすると、大きく表示できます)
変形したシリンダー

【変形したシリンダーフランジの修正】

墜落の衝撃で、取り付けフランジ部が大きく変形しています。
アルミ合金性のシリンダーケースにシリンダーライナーを圧入しています。
ボア径は39.00mmです。結構デカイ・・・。

フフランジの修正冶具


板厚6mmのSS材をプラズマでカットして、フランジ歪みの修正冶具を製作しました。
合板の上にシリンダーをあてがって治具をハンマーで叩いて歪みを戻していきます。
結構荒っぽいやり方ですが、衝撃で曲がったものは衝撃で戻すしかありません。

修正済みのシリンダー


修正後のフランジです。
まだ、僅かに歪みは残っていますが平面出しは旋盤で切削することにします。
フランジの歪みはほとんど取れましたがシリンダー内部にも塑性変形がありスムースにピストンが通りません。
シリンダー内面は後でホーニング加工を施すことにします。

旋盤チャック用アルミ缶


旋盤チャック時にシリンダーに傷が付かないようにアルミ缶で保護します。
マグナムDRY?のアルミ缶を切って使いました。
アルミ缶の厚みは0.12mm。
傷付けたくないワークにはバイスでチャックする時も使えて便利です。
空き缶の有効利用・・・・(^^)

シリンダーフランジ部の平面加工


シリンダーのフランジ部を旋盤で面出しを行います。
シリンダーを挿入するクランクケースの挿入部も楕円状に変形してシリンダーが入りません・・。
一緒に挿入部も0.05mm切削して小さくしました。


変形したシリンダーのホーニング

【シリンダーのホーニング加工】

歪んだシリンダーをホーニング砥石で研磨します。
油砥石用のオイルをつけて電気ドリルでゆっくりと廻しながら前後にスライドさせて研磨します。

ホーニング工具


ホーニングはバイクのブレーキシリンダーの研磨用を使いました。
ちょうどいいサイズ。砥石の粒度は350番程度です。
スプリングと遠心力で広がり、内面を均一に研磨できる便利な道具です。

補修完了のシリンダー


研磨完了したシリンダー内部です。
歪み部が削れて下地が少し見えます。
このシリンダーライナーは表面にハードクロム?のメッキが施されています。
また内面には、研磨時の筋がクロスするように入ります。この「クロスハッチ」はシリンダーのオイル保持のために大変重要です。
ピストンもスムースに動くようになりました。・・・(^^)


破損したパーツ

【破損パーツ&新品パーツの取り寄せ】

ロッカーアーム部が吹っ飛んだシリンダーヘッド。
コンロッドは2本が飴のようにひん曲がっています。
ラジアルマウントが墜落の衝撃を吸収したようで、押しつぶれています。

取り寄せた新品パーツ


ハンガリーから取り寄せてもらった新品のパーツです。
1EUR=161円とユーロ高で結構な価格ですが、一品の切削加工は手間隙が大変です。
海外からの輸入は現物が届くまで、やきもきします。
無事に届いて一安心・・・。



変形したクランクケース

【ひん曲がったクランクケースの修正】

4,5番のシリンダー取り付け部が衝撃で丸く変形しています。
クランクシャフトとの垂直が出ないとピストンは動きません。
こればっかりは引っ叩いて直すわけには行かないので、フライスで平面を出して
シム板を敷くことにします。

シリンダー取り付け面のZ軸の垂直出し


最も難関の4・5番シリンダー取り付け面の修正です。
クランクケースをバイスにチャックして垂直面をテストインジケータで測定します。
ラッキーなことに垂直度は約30mmの移動で2/100mm以内なのでそのままokという事で・・・。
クランクシャフトの水平もチェックしてみました。
クランクシャフトをケース内面に押し付けて密着させて水平を見ます。
これも2/100mm程でX軸の水平はokという事で・・・。

Y軸の水平出し


続いてY軸方向の水平を調整します。
Y軸を行ったり来たりの繰り返しで1/100mm以下に水平を調整しました。
再度、Z軸の垂直を確認してワークのセット完了です。
切削はあっと言う間ですが、セットには何倍もの時間がかかりました。
4・5番シリンダーの2箇所を修正切削・・・疲れた・・・。


シリンダーシムの製作

【シリンダーシムの製作】

クランクケースを切削した分、敷板を行うことにしました。
ケースの切削しろは1.2mm、シリンダーフランジ0.3mmで合せて1.5mmのアルミ板を敷きます。
アルミ板の43.0φ円切削は面倒なのでCNCで切り抜きました。

シリンダーシーム


ただのアルミ板ですが、このエンジンにとっては重要部品です。
同じものを2枚製作して完成。
クランクケースを新品にすれば何でもないことですが・・パーツは無茶高い・・。。
使えるものは、リサイクルして・・・。




新品コンロッドの修正

【コンロッドの修正】

新品パーツのサブコンロッドですが主コンロッドに入りません?
コンロッド厚み9.00mm・・・隙間9.00mmには入るはずが・・・。
仕方なく0.05mm切削することにしました。
購入した新品パーツなのに・・・??
旧パーツを測定してみたら、8.95mm・・・。
メンテナンス用と製品用では製作ロットが異なるの?


レストア完成のパーツ

【MOKIレストア完了のパーツ】

MOKIのほぼ全パーツです。5気筒もあるのでパーツも多い。
全部品を整理して、いざ組立て開始・・・(^^)

エンジン本体とフロントハウジングetc


クランクケース&フロントハウジングパーツです。
ハンガリー製を侮るなかれ、精密な切削加工が施されています。


レストア パーツ


カム駆動の減速ギアと脈動を生み出す小さなヒストン&コンロッド。
星型はケー内部の脈動がありません。
(星型ピストンは上昇・下降が同時に存在してしまいます。)
カム駆動用ギアの1枚に偏芯クランクが設けられピストンを駆動し脈動を発生させます。
この脈動はキャブレターのダイヤフラムを駆動するようになっています。

カム&ギアアッシー


カムは1/6減速で全周の3箇所の設けられ、精密な駆動内ギアが切られています。
周にある小さな黒いポッチは点火センシング用のマグネットが埋め込まれています。
点火時期調整は円周にあるマイナスネジを緩めて微調整できるようになっています。
非常に高精度の切削加工で・・このエンジンの性能を物語っているようです。


キャブダイヤフラム駆動用シリンダー


フロントハウジングに設けられた小さなシリンダー&ピストンです。
ここからチューブでキャブのダイヤフラムに導かれています。


破損したパーツ

【やっと組立て作業開始】

先ずは破損部の4番・5番シリンダーから・・・。

ほんとに!星型・・・。


4・5番シリンダーにはアルミの座布団を敷いています。
圧縮比はほとんど変わってないと思います?




ほんとに!星型・・・。


5気筒のシリンダーとヘッドを組み込むと、それらしくなって来ました。
このメカニカルな、幾何学的な動きが星型の魅です。
シリンダーの下死点は各シリンダーで明らかに異なります。
ショートコンロッドではやむ得ませんが、性能にはどのくらい影響するのでしょうか?


プッシュロッドの長さが違う??


取り寄せたロッドが3mm長い・・・(--;)
先端部は焼き入れが施され簡単には切削できませんので、グラインダーで研削します。


結構でかいMOKIエンジン


コンパクトなクランクケーですが、シリンダーとヘッドが付くと・・(--;)
結構でかいエンジンです。215ccもあると思うとかなりコンパクトなエンジンです。
もう完成間近です。


テストランの結果へと続きますが・・・・(^^;)

破損したパーツ

【晴れてテストラン開始】

万全の準備で修復後の初運転を行いました。
テスト前のベンチにセットされたMOKIは精悍ですが・・・・・。
この後、ブルッ、ブルブルッ・・・廻った!・・・と思ったら・・
バキッ!・・・5番シリンダーのフランジから捲れあがって。。。(;;)
あえなく、ダウン。
墜落の衝撃で楕円状に変形していたネジ穴をそのまま使ってシリンダーを
固定したのが間違いでした。ボルトは4本とも引き抜かれて・・・。
航空機エンジンの整備では不安に思ったら、トコトン納得がいくまでやらないと
そのつけは、計り知れない・・・と、反省!


もう一度、仕切り直して再挑戦します・・・・。

Moki 復活!!

【やっと、やっと!・・・Mokiが復活!!】

精悍!このエンジンは廻ってなくてもその存在感があります。
星型5気筒ガソリンエンジンが復活しました。
32インチのバカでかいプロップ、ジュラルミンの削りだしの
ピカピカのスピンナー・・・。
数回のスターター駆動で爆音をあげました。
これがMokiの響き・・・・。 (写真をクリックすると、大きく表示できます)
星型エンジン MOKIの動画1アイドリング1000rpm(約6Mb)
星型エンジンMOKIの動画2少しスロットルを・・・。(約2Mb)





ラジコン技術に掲載されたMOKIエンジン

ラジ技の2004年1月号にMOKIの5気筒エンジンが掲載されてました。
記事によると自動進角装置やレブリミッター機能を持った電子制御・・・
芸術的な珠玉の存在・・・とあります。
GeeBee R-2に搭載され第17回RC航空ページェントで披露されてます。


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