超小型エンジンのクランクシャフトの熱処理
超小型ツインエンジンのクランクシャフトに
簡易の「浸炭焼き入れ」を行います。
シャフトの性能は、熱処理で決まります。
【浸炭焼入れ編】
【熱処理前のクランクシャフト】
これから浸炭焼入れするワークです。
加工済みのワークをステンレスの針金で縛っておきます。
連結の順序があるので、バラバラにならないように・・。
【ステンレスのケース】
ステンレスパイプを加工したものです。
何度も使って変色していますが、材質SUS304です。
右の丸っこいのは、簡易の蓋。
【ワークのセットと木炭の粉を充填】
ケースの底に炭の粉を入れて、ワークをケースに入れます。
炭の粉は、ホームセンターで買ったバーベキュ用の木炭です。
トントンと振動を与えながら満杯になるまで充填します。
手は真っ黒、いつも外でしますが、風があると最悪・・・。
【焼入れ準備完了】
レンガはホームセンターで買いました。
簡易の焼入れ用の炉です。組み立て分解は、自由自在・・。
【加熱開始】
これもホーセンターで仕入れたカセットバーナで加熱・・。
ワークの大きさによっては、バーナーを2個使います。
加熱温度は、色を見ながら山勘の目安です。
薄赤くなったら約500℃、赤くなったら約700℃、黄色味がかったら900℃・・
通常のガス浸炭は、COガス雰囲気で900〜950℃で行います。
鋼の変態温度(723℃:C%により異なります)以上の、
オーステナイト領域で行います。
浸炭深さは√時間に比例するみたいですが・・適当に15分くらい行いました。
【急冷・焼入れ】
バケツに水を張って準備しておきます。
急冷は、垂直にすばやく入れて、後はかき回し・・・。
冷たい水の必要はないみたいです。変態温度付近を
1秒以内で通過すれば、焼入れok・・・。
適当でも、結構焼きは入るみたいです。
【焼入れ完了のワーク】
表面は薄青い色になります。(写真では不明?)
まともにワークをガスバーナで加熱したら、表面は
酸化して、黒っぽくなって、寸法は膨張します。
浸炭では、少し縮むの??
浸炭焼入れと言うより、酸化しない焼入れ(^^;)
焼きが入っているかどうかは?ヤスリを当てるとよく分かります。
【続いて焼き戻し編】
【天ぷら油で焼き戻し】
焼入れしっ放しは脆いため焼き戻し処理を行います。
といっても、缶詰と天ぷら油で・・・
小さな缶詰の缶に、天ぷら油を入れてコンロで加熱・・・。
簡易の放射温度計で約200℃にキープ・・(少し煙が出るくらい)
【ひたすら・・天ぷらを揚げます】
200℃前後で約1時間ほど加熱します。
焼き戻しは、歪んだ組織を整えます。
【これで熱処理完了】
これで、強度、靭性ともいい具合に・・・。
熱処理後に、破損試験を行って見ました。
焼入れしただけのものは、ペンチで曲げると簡単にポキッと折れます。
焼き戻ししたものは、なかなか折れません。堅くて強い!
自分の手で壊してみると、違いがよく分かります。
手間ひまかけて完成!(^^)
参考にした、「熱処理の本」です。
日刊工業新聞社から、発行されています。
イラストが多く、大変分かりやすい本で、お勧めです。
鋼は、熱処理次第で、まるで変わります。
頭では分かっているのですが、自分でやってみると・・
まるで、違う金属になったように・・・。
最初に試作したエンジンは、始動と同時にシャフトが破損しました。
1秒と耐えられませんでしたが、熱処理したものは、何十分廻しても、
何の変化もありません。
昔の車は、クランクシャフトがよく折れたそうです。
今の車は、まずそんなトラブルはありません。
熱処理の裏技が生きているから・・・?
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