直列4気筒エンジン シーラスをオーバーホールする。



排気量10ccの直列4気筒グローエンジン。
手作りとは思えない高精度な加工・・・。
製作者ジーママンのものづくりの執念を感じます。
今となっては貴重なエンジンと思います。
オーバーホールして、製作当初の性能を蘇らせます。

シーラスエンジンのテストラン はこちらからどうぞ!


シーラス:直列4気筒エンジン

【シーラス 直列4気筒エンジン】


【シーラス直列4気筒エンジンのオーバホール偏】

直列4気筒エンジン「シーラス」

20年?以上前、ジーママンによって手作りされた
「シーラス(CIRRUS)」をオーバホールします。
この直列4気筒エンジンは20〜30台くらい生産されたと聞きます。
慎重にしなければ、代わりのパーツはありません・・・


シーラスエンジンがバラバラに・・
クランク、コンロッドには錆が・・ 取り出したピストン

【貴重な模型エンジンが無残にもバラバラ・・】

長年の経年で内部には、錆が発生しています。
ピストンリングは鋳物製?でしょうか、固着しています。
べリングは、転がりません・・・。
慎重に浸透剤と灯油に一晩浸け置きしました。
摺動部は大丈夫みたいです。(一安心・・)


錆除去後に脱脂 黒染め液を塗布
レストア完了のクランクシャフト 黒染め液

【錆取りと黒染め】

クランクシャフト、ロッカー部品の錆を取って、
防食のため、黒染め加工を施しました。
黒染めは、USA製「Pema Blue」を使用して、青みがかったGun Blueです。
パーツを市販のパーツクリーナで完全に脱脂します。
(脱脂が不完全だと斑になります。)
後は黒染め液を塗って、水洗後にオイルを塗布して終了。
黒染め液は強力な酸化剤で、鋼の表面を黒い四酸三価鉄に変化させます。
防食皮膜は1〜3μm程度で、寸法変化しないので重宝します。




【ピストンAssy&カムシャフト】


刻印が打たれ、シリンダーも位置が決まっています。
コンロッドのシャフト取り付け部は、それぞれ当たりが
出ていますので、混在しないよう注意します。
カムシャフトは中央にも支えの受部があり、
両軸受けはベアリングではなくメタルタッチとなっています。
1/2減速ギアは、砲金製?
(少し色が違うので、銅合金かも知れません)


分解・整備完了のシーラスエンジン部品
(↑画像をクリックすると、大きく表示します)

【全パーツのレストア完了】

部品は行方不明にならないように、スチール缶の蓋に・・・。
六角ネジが2本、レンチ穴が馬鹿になって、仕方なく
フライスで頭をカットして、取り外しました。
シリンダーは潤滑油保持のため、細かい斜め筋の入ったホーニング
加工が施されています。これって何処理・・・?
(油膜を保持するための「クロスハッチ処理」と言うんだそうです。)

分解整備はこれで完了!


【ここから組み立て偏】



【シリンダガスケットの製作】

コンパスを改造した?サークルカッターです。
鉛筆の芯の代わりに、古いドリルにグラインダーで、
刃をつけたものです。
ドリル鋼ですから、油砥石で研げば、良く切れて重宝しています。


ベアリングの挿入 固着したベアリング&ニュー
クランクシャフトのセット シャフトのセンター微調整

【ベアリング&クランクシャフト組立て】

フロントハウジングをガスで加温して、ベアリングを挿入します。
フロント側には、シールドタイプとオープンの2ベアリング。
後方に1ベアリングの計3個のみです。
焼ばめになっていますので、常温では入りません。
ベアリングは、R6(内径9.925mm 外径22.225mm)インチサイズです。
汎用品ですので入手は容易で、3個で800円也・・・。

クランクシャフトは中央部の軸受けに固定・・・。
軸受けの上下の微調整を、シムで行っています。
シムの厚みは0.08mm。この辺には手作りを感じます・・・。


シリンダーヘッド&ロッカーアーム チャンピオン製プラグ

【シリンダーヘッド&ロッカーアーム取り付け】

ロッカーアームは、順番は無視して取り付けました。
後で、タペット調整します。
チャンピオン製のプラグです。
右上はグロー用のVG-3。
左下はイグニッション用のV-3。
プラグにもスケール感があります。
チャンピオンプラグは小さくても、チャンピオン。
結構高価なプラグです。


ピストンコンロッド取り付け フロントガスケット塗布
Holtsガスケットシール剤 ギアボックスガスケット塗布

【コンロッド&クランクケース組付け】

順番を確認して、ピストンとコンロッドを組みつけます。
クランクケースのシールは、液体ガスケットを使います。
オートバックスで買ったホルツ製の液状ガスケット、
1000円くらいでしょうか?
塗り過ぎは禁物です。外側にははみ出しても、
内側には極力はみ出さないように・・。
(上は塗り過ぎ・・やり直しました)
クランクケースは、前後、上下の4分割になっています。
必ず側面を締めてから、上下を締め付けます。
逆にすると、クランクシャフトの平行が出ない場合があります。
プッシュロッドの駆動ピンは、内側から挿入のため、
組み立て中に抜けないように、注意して・・・。


タペットクリアランス調整 OS製タペット調整キット

【タペット調整とOS製のキット】

OS製の調整キットを使って、
ロカーアームのタペットクリアランスの調整を行います。
シックネスゲージ0.1mmをタペットヘッドに挟み、
マイナスドライバーで調整。ロックナットを固定します。


O.H 完了のシーラス直列4気筒エンジン

これで、シーラス直列4気筒エンジンのオーバホール完了!


【O.H完了した直列4気筒エンジン】

リアビュー フロントビュー サイドビュー
トップビュー 4シリンダー CIRRUS
(↑写真をクリックすると、大きく表示できます)

【CIRRUS 4Cylinder Engine 】

直列4気筒4サイクルエンジン。
排気量は1シリンダー2.5cc、総排気量10ccの小さなR/Cエンジンです。
ボア径17.40mmと小径のためか、点火プラグはヘッド側面から燃焼室に、
誘導される構造となっています。
ロッカーアームはむき出しで、メカニカルな動きはこのエンジンの魅力です。
クランクケースは砂型による製作でしょうか?
非常にシンプルな構造です。
点火は、エンジンフロント側から1−3−4−2・・・。
吸気は、クランクケース後部からケース内部を通り供給されます。
通常の4stのようなブローバイガス(オイル)の排気ノズルはありません。
クランクケース底部より、吸入することにより、
オイル溜りを防止して入るのでしょう?
グローエンジンであれば、問題はないと思われますが、
ガソリンエンジンに変更する場合には、インティークマニホールドの
途中にキャブレターを取り付けるのでしょうか?
取り付けポートが準備されています。(赤のペイント部)


OSから直列4気筒エンジンが発売されるのでしょうか?
ダイヤスターIL-300・・。
贅肉を落とした、細身の4気筒エンジンです。
内部の構造は分かりませんが、ほとんどこのシーラスと
同じ構造と思われます。
排気量は、約3立方インチ?(49cc)
こんな大きなエンジンを搭載する飛行機は???
もっと小さな、コンパクトな直列4エンジンは出来ないのでしょうか?
CIRRUSのテストランについては、また追って・・・。


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