10クラス4サイクルエンジンの切削加工偏


世界最小クラスのスーパーチャージ4サイクルエンジン
世界最小クラスのスーパーチャージ4サイクルエンジン

10クラス4サイクル模型エンジンパーツ

クランクケースで混合気を圧縮してシリンダーに送り込むスーパーチャージ方式で
排気量1.62ccの量産型としては世界最小クラスの4サイクルエンジンの加工編です
ボア径13.4mm、ストローク11.5mmのグローエンジンです。

試作エンジンについては 「10クラスのマイクロ4サイクルエンジンの試作」をご参照下さい。



【10-4stエンジンの加工偏】  (写真をクリックすると、大きく表示できます)
たった一つのエンジンの加工にも多くの冶具があり、作った本人でさえ、どう使うのだったか分からなくなる事があります。
この加工編は自分自身の忘備録も目的として適当に羅列しています。従って説明内容はあまり親切ではないかも分かりません。


【クランクケースの加工】
クランクケースの加工

【クランクケースのNC加工】

NC切削加工済のクランクケースです。エンジンマウント用の穴を4か所ドリル加工して、これを基準にチャック後にマシニングで一気に加工します。
問題はドライブベアリング穴の加工後NCターンテーブルを180度回転させてフロントベアリング部を加工すると1〜2/100程度センターズレを生じます。
NC回転テーブルの誤差が出てしまうため、ドライブ側から軸穴を通してフロントベアリング穴をスロットカッターを通し同軸で加工しました。 これで軸振れはなありません。


CNC切削

【送気口のリューター加工】

このエンジンはクランクケースで吸気圧縮するスーパーチャージ方式です。
圧縮された混合気をこの通路を通して吸気バルブに送り込みます。
できるだけ通気抵抗を小さくするために内部の通路曲がり部にリューターでRを付けています。


送気ニップル取り付け

【送気ニップルの取り付け】

ステンレス製のニップルをクランクケースに圧入します。
ニップルはシリコンチューブを取り付けてチャンバに送り込む為のものです。
リーク防止のためにすきまバメ用のロックタイト648(耐熱用)を少量塗布して圧入用のアルミ冶具を押し当てます。


送気ニップル

【送気ニップルの圧入】

バイスに挟んで圧入していきます。。
圧入後は、はみ出したロックタイトを綺麗にふき取ります。
嫌気性タイプのシール材ですのではみ出したものは固まりません。
耐熱性は200℃以上ありますので問題になることはありません。

ニードルバルブ

【ニードルバルブ】

ステンレス製のニードルバルブです。燃料用ニップルロックタイトのシール材を塗布して圧入しています。
内部はニードル挿入用に細目ねじ加工を施しました。
真鍮+メッキは工数もかかるため快削SUSとしました。かじることも錆びることもありません。


ニードルバルブ

【ニードルバルブとクランクケース】

シンプルな構造にするためニードルバルブ本体はクランクケースに圧入します。
圧入部にはローレット加工を施しています。
小さなエンジンですのでねじ加工などはできるだけ省いています。
圧入後はケース一体型で分解はできません。


ニードルバルブ

【ニードルバルブの圧入】

垂直を出すため圧入時の受けとバルブ保持用の冶具を作りました。
ほんのわずかでも斜めに入ると圧入強度に影響が出ます。
バイスでがっちりと押し込んで圧入接着します。
墜落等で衝撃を受けた場合やゆるみが出た場合は一式の交換が必要になります。


キャップ

【送気ラインのメクラキャップの切削】

スーパーチャージの送気ラインのメクラ用のキャップです。
結構面倒な切削ですが精度よく作らないと圧入時に入らなかったり緩すぎて漏れたりします。
穴径5.00に対してφ4.99位で切削し一部5.02程度の山を設けて部分シール構造にしています。
バイト交換は面倒なのですべて突っ切用のバイト1本で切削しています。


キャップ

【メクラキャップ】

小さな部品ですが大切なメクラです。
まとめて数十個一度に切削しますが加工は忍耐あるのみです。


メクラキャップ

【キャップ圧入後のクランクケース】

圧入後はこんな感じで仕上がります。
アクセントとしてリング状に溝を入れていますが、面倒な面取り加工を省略しただけです。


リーマ

【クランクシャフト部リーマ加工】

内部のバリ取りを兼ねてφ8.00のリーマを通します。
ドライブベアリングとフロントベアリングの軸は完全に出てるのでシャフトクリアランスは1/100程度です。
フロントベアリングは小さいので接触シールのベアリングは販売されていません。軸シールでスーパーチャージの内圧を受けています。
小さいエンジンだから仕方ありません。


クランクケースASSY

【完成したクランクケースASSY】

キャブボディ、ニードル部、混合気の送気ラインを一体化したクランクケースの完成です。
一体構造でシンプルかつ軽量化にこだわって設計し一切の無駄を省いた構造です。
大きいエンジンならここまで拘る必要はありません。



【シリンダーの加工】
シリンダー加工

【シリンダーと加工冶具】

アルミダイキャスト製のシリンダーに#100のガラスビーズでサンドブラストをかけました。
アルミナだと表面はつや消し状態になりますがガラスビーズだと光沢のある綺麗な表面に仕上がります。
プラスト装置は塩ビパイプ等を利用してコンプレッサー側面に自作して取り付けました。
シリンダー内部の旋盤加工を施すため、チャックできる冶具を製作しました。
シリンダーは複雑な形状ですが下部のフィン3枚程度と下部フランジ部をしっかりつかめるように設計しています。


シリンダー加工

【シリンダー内面加工】

旋盤にチャックして内面の穴繰り加工を施します。
鋳物は少し抜きテーパーが付いていますが切削しろはわずかですから自動送りで加工します。
冶具は一部割を入れていますのでねじで広げてシリンダーを挿入しねじを緩めれば固定されます。
取り付けフランジを加工して穴繰りは終わりです。



シリンダー内面加工

【シリンダー内面加工後の確認】

切削が終えたらシリンダ−ライナーを挿入して確認します。
シリンダーライナーはアルミに無電解ニッケルメッキを施し350℃でベーキング処理を行っています。 クロムに近い硬度となり耐摩耗性が確保されています。
スムースに入ることを確認して内面切削は完了です。


フランジ部ネジ穴加工

【シリンダー取り付け部の穴加工】

シリンダーを取り付けるネジ穴を加工します。
シリンダーを冶具ごとフライス盤にセットしてダイヤルゲージでセンター出しを行います。
取付穴4か所のドリル加工を行います。
取り付けはM2サイズの六角穴付きボルトですので穴径はφ2.2としました。
クロムモリブデン鋼のM2ねじは小さくてもM3より高価です。汎用性に劣るからでしょう。


バルブ部の加工

【エンドミルのZ軸の位置出し】

バルブ部を加工するためエンドミルのZ軸の位置出しを行っています。
工作物とエンドミルの刃先にφ6.00のエンドミのルシャンク部がかろうじて通るまでZ軸を調整して合わせます。
バルブライナーを圧入するための穴加工です。


バルブライナー加工

【バルブライナーの圧入穴加工完了】


吸気と排気バルブライナーを取り付けるベース穴の加工が終わりました。
手作りなので仕方ありませんが結構神経を使う加工です。
NCなら一度に全部加工できるのですが・・・・。


シリンダーの設計図面

【シリンダーの設計図面と加工】

シリンダーの設計図に基づいて加工用の修正を施しました。
図面通りに加工してもいいのですが途中でわずかな修正が入ってきます。
外注加工ならそういうわけにはいきませんが実加工を基準に図面を修正します。
CADデーターも修正しておかないと後で大変なことになります。


バルブライナー

【吸排気バルブライナー】

リン青銅製の吸排気バルブライナーです。
15用エンジンにも使うので高精度に外注で加工してもらったものです


バルブライナーローレット加工

【バルブライナーのローレット加工】

ライナーの外周部にローレット加工を施しています。
これをシリンダーブロックに圧入します。
薄型のローレットは自作したものです。


ライナー部のリーマ加工

【バルブライナー部のリーマ加工】

吸排気バルブのライナー圧入部にφ6.5のリーマーを通して整えます。
ライナー外形とほぼ同径ですがローレットを切った分だけ圧入するライナーが大きくなっています。
エンジンメーカーでの量産ではこんな方法はとらないでしょう。


ライナー圧入完了

【バルブライナーと圧入したシリンダー】

バルブライナーの圧入はシリンダーブロックをマイクロバーナーで加熱しホット状態に膨張させて圧入します。
エンジンがホットな状態でも保持できるようにしています。


シリンダー内部完成

【シリンダー内部の加工完成】

手作りでは気の抜けない限界の加工が続きます。。
手加工のリスクは大きく最後の最後にミスると材料から今までの加工のすべてが無になってしまいます。
集中力の鍛錬みたいなシリンダー加工はまだまだ続きます。


吸排気口の加工

【吸排気口の加工冶具】

これからシリンダーの外部の加工になります。
吸排気口とプラグ穴などを加工するための冶具に交換します。
冶具は位置出し用のピン、チャック時の角度出しができるように製作しました。
全部手加工です。


吸排気口の加工

【吸排気口の加工位置出し】

芯出しバーを使って位置出しを行います。
芯出しバーは高速で回転させて工作物等に接触すると回転芯が90度ずれて知らせてくれます。
1/100mm以上の再現精度があります。



吸排気口の加工

【吸排気口のドリル加工】

吸気口、排気口のドリル加工を行います。
全工程で圧入したバルブライナーごと削ります。。


吸排気口の加工

【吸排気口の加工】

タップ加工前に原始的な手加工で面取りを行います。


吸排気口の加工

【吸排気口のタップ加工】

吸気口、排気口、プラグ穴のタッピングを行います。
プラグは2スト用4スト用ともに使えるように深穴にして穴の根元までタッピングしなければならないのでタップ先端は切り落としています。
プラグねじ径はインチサイズで1/4×32です。1/4インチ=25.4mm/4、32山。
吸排気口ねじ径はM6.0×0.75Pで細目ねじになります。


プラグ穴のねじの加工

【プラグねじの加工】

インチタップで手加工です。
4サイクル用のプラグはリーチが長いのでこれが使えるように根元までねじを切ります。


ロッカーアームシャフト取り付け部の加工

【ロッカーシャフト取り付け部加工】

ロッカーアームのシャフトを固定するための受け部の加工です。
φ6.0のシャフトを固定するためR3.0の半円をエンドミルで加工します。
垂直が出ていないとシャフトが傾きますので冶具が精度を左右します


取り付け穴の加工

【吸排気口の加工冶具】

ロッカーシャフトを取り付けるネジの下穴加工です。
センター出しが困難なためダイヤルゲージを当てて微調整してドリル加工しています。
手加工ならではの苦肉の策です。


ロッカー取り付けタップ加工

【ロッカーシャフト取り付けタップ加工】

M2.6のタップ加工を施します。
小型のタッピングマシンでレバーを押し下げると右回転でねじ切りし押し上げると逆回転になりタップが抜けていきます。 スイッチで回転方向を切り替えて左ねじを切ることもできます。
昔販売されていたサカイマシン製のものを使っていますが小径のネジを切るには使いやすいマシンです。


吸排気口のバリ取り加工

【吸排気口のバリ取り加工】

圧入したリン青銅のバルブライナーは吸排気のドリル加工を施していますので切り口のバリをリューターで丁寧に取っていきます。
放置すると運転中に剥がれたバリがバルブに引っかかりトラブルを起こす可能性があります。


ライナーリーマ加工

【バルブライナーのリーマ加工】

バルブライナーは元々Φ3.00のリーマ加工を行っていますが挿入するバルブシャフト径が焼き入れのより膨張しφ3.00で入りません。 仕方なくφ3.01のハンドリーマを通しています。
鋼材は精度よく切削しても熱処理で膨張します。感覚的には5〜8ミクロン程大きくなり入らなくなることはあります。
一般的に量産するシャフトは熱処理後に研削で精度良く仕上げますからこんな問題は起こりません。 研削盤など持っていませんので、以後は熱処理後の膨張を考慮した寸法で仕上げるようにしました。


完成したシリンダーブロック

【完成したシリンダーブロック】

これでやっとシリンダーブロックの完成です。
小さくても多くの手間と工数がかかります。
ここでやっと一息つけます。



【ギアケースASSYの加工組み立て】
ギアケースの加工

【ギアケースの加工】

ギアケースはロストワックスで成形しました。
プッシュロッドのスライド用ライナーを圧入後にマシニング加工を施しています。
軸受ブッシュ、カムシャフトなど追加工していきます。
写真は1stギアのリン青銅の軸受と圧入冶具になります。


軸受ブッシュの圧入

【軸受ブッシュの圧入】

1stギアのシャフトを受ける軸受ブッシュをバイスで圧入します。


1stギア軸受ブッシュ圧入

【圧入された1stギア軸受ブッシュ】

圧入された1stギアの軸受ブッシュです。
1stギアはドライブ側はベアリング受けでもう一方の端部はブッシュで受けています。。


2ndギアとカムシャフトの圧入

【2ndギアとカムシャフトの圧入】

焼き入れしたφ4.00のSK材のシャフトをギアケース後部から冶具を使って圧入します。
シャフトの圧入部は前もってローレット加工を施し焼き入れしています。
圧入冶具はセンター出しと垂直出しの精度を確保しています。


圧入されたカムシャフト

【圧入されたカムシャフト】

2ndギアとカムを受けるシャフトをギアケース後部から圧入した状態です。
シャフトはφ4.0のセンターレス研磨のSk材から加工したものでです。


カム

【吸排気一体型カム】

メタルインジェクション成形で製作した吸排気一体型のカムです。
材質はSKD11でダイス鋼と呼ばれている固い材料です。
メタルインジェクション成形は鋼材の粉とバインダーを混ぜてこれを射出成型し炉で焼き上げます。
試作はNC切削で製作して性能確認した後、金型を起こしました。
カムは生材をリーマ加工して焼き入れ処理を行っています。


プッシュロッドライナー

【プッシュロッドライナー】

プッシュロッドを受けるライナーです。
SK材から切削し焼き入れ後に防食用の黒染めを施しました。
カムとの接触面はRを付けています。


1stギアベアリング

【1stギアベアリング】

1stギアを受けるベアリングです。
サイズは8×12×2.5オープンタイプになります。


2ndギア・カム

【2ndギア&カム】

2ndギアは標準モジュールより切り出し熱処理後に黒染めしたものです。
0.1oのステンレスワッシャーはギアケースとカバーの当たり面に装着してアルミとの直接接触を避けています。。
カムとギアは凹凸部を設けて指定の位置でかみ合う構造です。


ギア・カム・クランクリング

【ギア・カム・クランクリング】

1stギア、2ndギア、カム、ギアをドライブするクランクリングに各バーツです。


1stギア&クランクリング

【1stギアとクランクリング】

1stギアをアルミ製のクランクリングに挿入してφ1.5のピンでロックしています。
クランクリングはクランクシャフトの後部に連結し駆動します。


1stギアASSY

【完成した1stギアASSY】

1stギアは標準モジュールより切り出し熱処理したものです。
1stギアと2ndギアのギア比は1/2です。4サイクルエンジンですからバルブは2回転に一度開閉します。


ベアリング挿入

【ベアリング挿入】

1stギアを受けるベアリングを挿入します。
ベアリング受けは焼き嵌めになっていますのでマイクロバーナーで加熱膨張させて挿入します。


1stギア組付け

【1stギア組付け】

1siギアASSYをベアリングに挿入します。


ステンレスワッシャー挿入

【ステンレスワッシャー挿入】

厚さ0.1oのステンレス製のワッサーを挿入します。
ギアが直接アルミ面に触れるのを防止しています。
接触するとアルミが削れた黒く汚れた状態になります。


2ndギア挿入

【2ndギア挿入】

次にオイルを塗布して2ndギアを挿入します。
1stギアとのかみ合い位置に注意が必要でこのかみ合いでバルブ開閉タイミングが決まります。

カム挿入

【カム挿入】

カムはかみ合いの凸部を2ndギアの凹部に合わせて挿入します。


バルブ開閉位置確認

【バルブ開閉位置確認】

プッシュロッドライナーを2本挿入して1stギアを回しプッシュロッドの上下を確認します。
上死点位置でプッシュロッドは吸気が下がり、排気が上がり始める切り替わり位置となります。
これがずれていると2ndギアから組み直しとなります。


オイルを塗布

【オイルを塗布】

ステンレスワッシャーを入れてギア部にオイルを塗布します。
オイルはグロー燃料に使用されるものでピンクのクロッツオイルを利用しました。


ギアカバー

【ギアカバーとガスケット】

加工済みのギアカバーとガスケットです。


ギアカバー取り付け

【ギアカバー取り付け】

ガスケットを挟んでギアカバーを取り付けます。
取り付けビスは3本で均等に締め付けます。


カムシャフトロックビス

【カムシャフトロックビス取り付け】

カムシャフトには垂直荷重がかかるためシャフト端部にはテーパー加工を施しておりイモネジで固定します。
ギアケース内もスーパーチャージの内圧が掛かるためねじロック剤を塗布してシールします。


完成したギアケースASSY

【完成したギアケースASSY】

完成したギアケースASSYです。
ギアの材質はS45Cでどちらも焼き入れ処理を行っています。
1stギアと2ndギアのピッチ円間の寸法は7.50oが基準ですが熱処理により膨張しており基準寸法ではバックラッシュがなくなり回転時に重くなります。
量産時には軸間寸法を0.05o大きくして7.55oで加工しています。
手作り時にはこんなところも注意が必要となります。



【クランクシャフトの研磨】
クランクシャフトの研磨

【熱処理後のクランクシャフト】

シャフトの加工は外注にて行いました。
材質はクロムモリブデン鋼(SCM435)で強度的には十分なので耐摩耗性を確保するため窒化処理を行いました。
窒化は焼き入れより低温で行うので歪が小さい事が狙いです。
研削加工が行えないので熱処理による膨張を考慮し公差範囲を8/1000o程小さくしています。
窒化後の表面はグレーつや消し状態ですが狙い通りの寸法に仕上がってきました。
SCMはクロムを含有しており窒化クロムの硬質な表面に仕上がります。

クランクピン部研磨

【クランクピンの研磨】

偏心冶具を製作して旋盤にチャックしピン部を研磨します。
軸センターは旋盤の回転センターにドリルチャックを取り付けこれで一度掴むことで出しています。


クランクピンの手研磨

【クランクピンの手研磨】

#1000の耐水ペーパーにオイルをつけて磨いていきます。
手は真っ黒になり手作りの最たるものです。


シャフト部の研磨

【シャフト部の研磨】

ベアリングを挿入するシャフト部を同様に研磨します。


ドライブベアリング部径

【ドライブベアリング部径】

表面研磨では計測できるほど寸法は変わりません。計測誤差範囲です
マイクロメーターでの測定でφ7.990。


フロントベアリング部径

【フロントベアリング部径】

マイクロメーターでの測定でφ6.981。


完成したクランクシャフト

【完成したクランクシャフト】

研磨部はピカピカで熱処理肌はグレーのつや消し状態です。
す。



【シリンダースリーブの研磨】
シリンダースリーブ

【シリンダースリーブとチャック冶具】

シリンダースリーブはアルミ(2017)に無電解ニッケルメッキを施して350℃で約1hrベーキング処理を施しています。アルミピストンと線膨張率は同じなので抵抗になるピストンリングは使いません。
表面硬度はクロムに匹敵するくらい硬くなり耐摩耗性が確保できます。
メッキ前にスリーブ内面はクロスハッチを残して研磨加工しています。
無電解ニッケルメッキは電極を使わないので均一なメッキが可能でメッキ厚は10ミクロンです。


シリンダースリーブ

【シリンダースリーブとチャック冶具】

チャック冶具にシリンダーを挿入して旋盤にチャックします。
シリンダースリーブは旋盤で直接チャックすると歪むのでチャック冶具を作りました。


内面研磨冶具

【内面研磨用の冶具】

小型のホビー旋盤を使って内面を自動で研磨する装置を作りましたが失敗しました。
研磨は刃物を研ぐように微妙な力の入れ方が必要で自動機は力加減ができず途中跳ねたりしてうまくいきませんでした。
先端に耐水ペーパーを挟む構造で結局手動の研磨冶具になってしまいましたが、なかなかの優れものです。


シリンダースリーブ

【シリンダースリーブの研磨】

旋盤をスロー回転にして前後させながら内面を研磨します。
メッキの表面を整えるだけですので2〜3分ほどで終わります。
メッキ前にも同じように研磨しますが、シリンダーは熱膨張を考慮して上部は下部より1/00o程度狭くテーパー状に研磨しています。



【バルブの研磨加工】
バルブの研磨

【吸排気バルブの研磨】

試作はSK材で切削しましたが大変なので量産バルブは外注加工しました。
バルブライナーとの当たりは線接触になり摺り合わせで面接触になるように角度を設けました。
焼き入れしていますのでやすりが立たない位の硬度になります。


バルブシャフト部研磨

【旋盤に冶具でバルブをチャック】

シャフト部を研磨するため特殊な構造でチャック冶具を作りました。
精度よく切削されているので研磨は不要かも知れませんが念のための研磨です。


バルブ研磨

【バルブ研磨】

シャフト部の表面を整える程度の研磨処理です。
運転中に排気バルブは高温になるのでスタックしないよう研磨します。


バルブ

【吸排気バルブ】

写真の上が研磨後で下は研磨前のバルブです。
シャフト部の光沢が異なります。


バルブスプリング

【バルブスプリング端面処理】

バルブスプリングの端面を平滑に研磨しています。
包丁を研ぐダイヤモンド研磨盤をボール盤にセットしてスプリングを回転させながら研磨盤も回転させます。
数秒でスプリングの端面は平らにカットされます。

バルブスプリング

【バルブスプリングの端面比較】

写真の右が研磨後で左は研磨前のバルブスプリングです。
スプリングの端面切削はばねが逃げるので面圧を利用して削るしかありません。


バルブASSY

【吸排気バルブASSY】

左側からバルブ止め℃リング、スプリング受け、バルブスプリング、バルブです。
Cリング(馬蹄リング)は焼き入れリボン材の打ち抜きで製作しています。 生材では耐久に問題があるので厚み0.5mmの焼き入れ材を使っています。
スプリング受けは快削鋼に黒染め処理です。スプリングは汎用品をいくつかテストして選定しています。



【ロッカーアームの製作加工】
ロッカーアーム

【ロッカーアームの製作】

ロッカーアームはカムと同様メタルインジェクション成形で製作しました。
摺動部の軸受穴にφ3.5のリーマを通します。
材質はSKD11です。


ロッカーアーム

【ロッカーアームの加工】

タッピング加工を行うための固定冶具です。
1個2個ならハンドタップでいいのですが数百個やろうとするとタッピングマシンでないと気が狂います。


ロッカーアームのタッピング

【ロッカーアームのタッピング加工】

ワンタッチで冶具にはめ込んでタッピングのレバーを下げて上げればタップ処理は終わりです。
ねじ径はM3です。


シムワッシャー加工

【シムワッシャーの切削】

ロッカーシャフトにアームを差し込みこのシムワッシャーを入れてEリングで止めます。。
内径3.5oの真鍮パイプを輪切りにしていきます。


シムワッシャー

【シムワッシャーのバリ取り】

切断面にどうしてもバリが出ます。これをセンタードリルで丁寧に取っていきます。
数十個もやるとバリが腹立たしくなってきます。
展示会ではバリ取り機が良く出品されていますが加工業者の悩みの種でしょう。


シムワッシャー

【完成したシムワッシャー】

ただのワッシャーです。
内径3.5o厚み0.5oの標準的なワッシャーがあれば切削しなくていいのに・・・。


プッシュロッド調整ねじ

【プッシュロッドの調整ねじ】

バルブクリアランスを調整するためのロッド受けのネジです。
M3の六角穴付きのセットスクリュウの端面をボールエンドミルでアール加工します。
R0.75でφ1.5のプッシュロッドを受けます。ねじはSCM材です。


プッシュロッド調整ねじ

【プッシュロッドの調整ねじ】

加工したねじの端面です


プッシュロッド調整ねじ

【プッシュロッドの調整ねじ】

これも数十個単位で加工します。
旋盤へのチャックはネジ山をつぶさないようにビールのアルミ缶を切ってねじに巻いて掴みます。


ロッド抜け防止ゴム

【プッシュロッドの抜け防止】

プッシュロッドの抜け防止用にゴムチューブをカットして調整ねじにはめ込みます。
ロッドは運転中に抜けることはありませんがオープンロッカーのためアームに触れると抜けることがあります。
それを防止するためゴムチューブを嵌めています。


ロッド抜け防止ゴム

【ロッド抜け防止ゴム】

ゴムチューブを5mm間隔でカットして使います。
このゴムはガソリンエンジン用の燃料チューブです。


ロッカー関係のパーツ

【ロッカー関係のパーツ】

ロッカーアームに関係するパーツだけでもこれだけあります。
4サイクルエンジンはコストが掛かります。


ロッカー関係のパーツ

【ロッカーアーム組付け】

ロッカーアームにM3のセットスクリューと抜け防止ゴムねじ込みM3ナットで止めます。
これで1セットで吸排気の2セットが必要です


ロッカー関係のパーツ

【ロッカー関係のパーツASSY】

完成したロッカーアームASSYです。



【ロッカーシャフトの製作】
ロッカーシャフト

【ロッカーシャフトの切削加工】

φ6.0のセンターレス研磨されたSK材をカッティングマシンでカットします。



ロッカーシャフト

【カットされたロッカーシャフト】

精密カッターは厚さ0.5oの砥石でカットするのでカット面は大変綺麗です。


ロッカーシャフト

【ロッカーシャフトの旋盤加工】

ここから旋盤加工に入ります。
ロッカーアームが入るφ3.48程度に切削します。


ロッカーシャフト

【ロッカーシャフトの溝加工】

止めEリングの溝加工を施します。


ロッカーシャフト

【ロッカーシャフトの仕上がり確認】

ロッカーアームを差し込んで仕上がりの確認をします。
もう一方の面を同様に切削して旋盤加工は終了です。


ロッカーシャフト

【ロッカーシャフトのフライス加工】

フライス盤にセットしてエンドミルでねじ止め部の平面加工を行います。


ロッカーシャフト

【ロッカーシャフトのドリル加工】

M2.6の六角穴付きボルトが入る穴をドリル加工します。。


ロッカーシャフト

【ロッカーシャフトの切削加工完了】

切削加工が完了したロッカーアームシャフトです。
この後、熱処理と防食用黒染めを行って完了です。
できるだけシンプルな加工で目的の機能を果たすべくφ6.0の半月状としました。
取り付け部はφ6.0のエンドミルで加工でき、シャフトは標準材がそのまま生かせます。
切削加工を自分で行わない設計者は結構無駄な設計をするものです。
少しでも楽したい一心で色々と工夫できます。



【チャンバの組み立て】
チャンバの構成パーツ

【チャンバの組み立て】

吸気チャンバはクランクケースで圧縮された混合気を溜め置きする容器です。
できるだけ効率よく吸気を行いかつキャブへの吹き返しを抑制するために設けました。
内容量は何度かテストして最後は直感で決めました。
できるだけ構成パーツを少なくするためケースとインテークニップルを一体化しています。


チャンバの構成パーツ

【チャンバの組み立て】

3部品を組み立てて嫌気性のロックタイトでシールしています。
耐熱性は200℃程度あるので問題にはなりません。
内圧が掛かるのでシール性が問題です。


チャンバの構成パーツ

【チャンバの組み立て】

完全に硬化するのに一昼夜置きます。


チャンバの構成パーツ

【チャンバの組み立て】

ロックタイトが硬化後に挿入ニップルが動かないようねじ止め用のドリルとタップ加工を行います。
取り付けねじはM2の真鍮+メッキねじにしました。ねじを緩めようとすると折れてしまいます。
外れては困るねじなのであえて外せないようにしました。
無理に外すとロックタイトが破壊されシール性が損なわれ再生不能となります。
普通の製品では絶対やらない方法ですが、耐久150フライトでも問題ありませんでした。


チャンバの構成パーツ

【チャンバの漏れテスト】

最後に内圧をかけて漏れテストを行って完成です。
テスト前にはみ出したロックタイトをアルコールで洗浄します。
小さいエンジンを実用化しようとすると大型エンジンでは考えられないような工夫が必要です。
何事も挑戦とはそんなものかも知れません。



【ドライブワッシャーの加工】
チャンバの構成パーツ

【ドライブワッシャーの加工】

ドライブワッシャーはロストワックス成形品で、15エンジンに使用したものを流用しました。
旋盤加工用の軸と旋盤チャック面出し用の冶具です。


チャンバの構成パーツ

【ドライブワッシャーの加工】

旋盤のスクロールチャックに面出し用の冶具を押し当ててドライブワッシャーをセットしてドライブワッシャーの内側の面を加工します。。
プロペラの取り付け面と加工した面の平行が出ていないとプロペラのトラッキングがずれてしまいます。


チャンバの構成パーツ

【ドライブワッシャーの加工】

クランクシャフトと同じ形状のシャフト冶具にドライブワッシャーを取り付けて外形の加工を行います。
これで10クラスのドライブワッシャーに出来上がりです。
エンジンのクランクシャフトに取り付けた状態と同じ条件で切削するので振れなどはほとんどありません。


ピストン、コンロッド、ニードル、スロットル、マフラー等、まだ多くのパーツがあります。整理ができたら追記していきます。


量産型でフライトができる実用の小さな4サイクルエンジンを目指しました。
1.62cc(10クラス)の4サイクルスーパーチャージエンジンです。
ラジコン飛行機を飛ばすには、ただ回るだけでは使い物になりません。
耐久性、姿勢変化や気圧変化に対する安定性、扱いやすい始動性、・・・・・
小さくても安定したパワーやレスポンスなど。。。
エンジンには要求される資質は多くあります。
ベンチテストで調子のいいエンジンは上空で良く回るとは限りません。
設計には「実用性と耐久性」を最も重視しました。

クランクシャフトの窒化処理、シリンダーの硬質ニッケルメッキで耐摩耗性を確保しました。
いわゆるABC仕様ではなくAAN仕様です。(アルミピストン、アルミシリンダー+硬質ニッケルメッキ)
シリンダーとピストンとの熱膨張率は同じで、抵抗の大きいピストンリングは使用していません。
バルブライナーなど摺動部にはリン青銅を圧入し、主要軸受には3個のベアリングを使用しました。
ギアはS45C焼き入れ、カム、ブッシュロッドなど駆動部品は全て熱処理を施しました。
エンジンはそれぞれ使う材料と熱処理や表面処理次第でガラクタにも逸品にもなります。
小さくても、それなりに高性能なエンジンを目指して製作したものです。
自分で作ったエンジンは自分で耐久テストを行いました。150フライトまではカウントしたものの
それ以降はやめました。
1フライト5〜10分で既に200フライト近くをこなしており、これ以上の耐久性は
無意味だからです。

数十年前に自分で設計製作したエンジンで自作した飛行機を存分に飛ばしてみたいと夢みたいなことを
構想しました。30年いや40数年経ってやっと現実のものとなりました。
このエンジンは、300台を製作して既に完売しています。
500gほどの小さな飛行機が超スローフライトで4ストサウンドを残し目の前を通過していく。
昔描いた空想物語でした。



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